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【感想】東村アキコの「かくかくしかじか」を読んだら心が震えた

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東京タラレバ娘の作者、東村アキコ先生の自伝漫画「かくかくしかじか」を読んだ。

かくかくしかじか 1 (マーガレットコミックスDIGITAL)

かくかくしかじか 1 (マーガレットコミックスDIGITAL)

 

中学時代、美術部に所属していたぼくなら美術に関するネタが分かるかと思いきや、3年間デッサン1枚も提出しないで卒業してたわ。ハハッ。

 

美術の道に進んだ人、漫画家の人がたぶん一番共感できるんだろうなぁ。

共感しすぎて、「うわああああああ」ってなってそう。

クリエイターとして表現している人にもビビッとくるものがあるはず。

 

あまりに核心を突きすぎると、ホラーになる。

東京タラレバ娘もそうだったように、東村アキコ先生は読者の核心を突くのがおそろしくうまい。

一番痛いところをピンポイントで突いてくるので、ホラー漫画を読んでるような気分に陥る。

やめて、私のHPはもう0よ!!でも読んじゃう。

 

クリエイターなら思わずうなずく言葉

主人公の林明子(後の東村アキコ先生)と、明子の恩師である日高健三先生。

この2人の発言は絵を描いている人のみならず、何かを表現している人たちなら分かるはず。 

絵を描くということは、

木炭にまみれて、絵の具にまみれて、

ひたすら手を動かして、思い通りに行かなくて、

紙の上でもがいてもがいて、もがき続けているうちに偶然なのか必然なのか、

ごくたまにほんの一本、自分が納得いく線が見つかる瞬間がある。

その1本を少しずつ少しずつつなげて重ねて、ただひたすらそれの繰り返し。

産みの苦しみを乗り越えるには、結局逃げずに立ち向かうしかない。

いつもヒーヒー言いながら、ブログなり文章書いてます。

 

人間って不思議なもんです。

あれだけ時間を持て余していた学生生活にはまったく描かなかったくせに、

1日にほんの夜中の数時間の自由時間しかない状況になって、

初めて描き始めた。

これまさしく今の自分だわ。。

時間に余裕ある時に何かやろうと思っても、やる気にならなくて怠惰に呑まれちゃう。

でも逆に忙しいときって、何とかして時間を作るものだよね。

 

描きたいものなんてなくていいんや。

ただ描けばいいんや、目の前にあるものを。

描きたいものなんか探しとるからダメになる。

描けなくなる。

日高先生は、生徒に対して事あるごとに「描け」と指導する。

それがぼくには「書け」に見えた。

文章がうまくなるには、ひたすら頭使って手動かすしかない。

書く前から書きたいもの探すのは、ただ書かないための言い訳を探しているだけ。

 

昨日の衝動買いが、高いお店のごはんが、

その経験が紙の上に落ちて、

キャラクターたちが昨日の私と同じように紙の上で生き生きと遊ぶ。

 新しい経験が新しい表現を生み出す。

「その人ならではのもの」が反映されたコンテンツが好きだ。

 

東村アキコ先生の苦悩や後悔を感じる後半戦

3巻までの青春ストーリーとは裏腹に、漫画家デビューを果たした4巻から物語は少しずつシビアになり、露わになっていく明子の苦悩。

漫画家として飛躍したい明子は、日高先生に対して小さな嘘を重ねるようになり、苦悩するシーンが増える。

元気なのに疲れたふりして、大変なふりして、

なんとか先生から遠ざかろうとしていた気がする。

 白黒はっきり言わずあいまいな答えで、その場をやり過ごすこと。

 自分のついた幼稚な嘘が、じわじわと自分の首を絞めていく。

 私はグレーゾーンの一番白いところを拾って話すのをやめられない。

白黒はっきりしている日高先生に対して、明子は苦し紛れについた曖昧な嘘(グレーゾーン)でやり過ごそうとする。 

 

そんな明子を見ていると、1巻で明子が回想したこの言葉を思い出す。

小さなうそをつきながら、大人になる。

大人になったら、その嘘の量は2倍にも3倍にも増えて、

毎日毎日色んな人に気を遣い、色んな人に気を遣わせ、

もう何が嘘で何が本当かわからない世界に生きている。 

 

特に5巻は物語のスピードが一気に早くなる、というか1巻から4巻に比べると内容が薄い。

なぜなら、作者の「記憶がない」からだ。

その辺りの事情は、本を読んでほしい。

 

4巻・5巻は読まないほうがいいと言うコメントがあったが、ぼくは絶対読んだほうがいいと思う。

作者は、非難されかねない自らの傲慢さや薄情な振る舞いを包み隠さず伝えていて、自分が最低だったことを懺悔している。

でも人は見たいものを見る生き物だから、5巻で起きた出来事は白黒はっきりつけられるものではない。

作者が選んだ選択肢は、その時はベストだったんだと思う。

後付けのセンチメンタルなんていらないけど、作品を書いたことで東村アキコ先生の中で消化されるもやもやがあればいい。

 

全5巻なので、あっという間に読むことができます。

読み終えたとき、心が不思議と軽くなるのが印象的。

ぼくもいつか恩師と呼べる人に出会えますように。

 

かくかくしかじか コミック 全5巻完結セット (愛蔵版コミックス)

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